専門用語集

Dictionary専門用語集

第一三共RDノバーレで日常的によく使う専門用語をご紹介します。

モダリティ
創薬では、低分子化合物、ペプチド(中分子)薬、抗体医薬を含む蛋白質医薬、核酸医薬、細胞医薬、再生医療などさまざまな形態による治療手段を意味する。マルチモダリティとは種々のモダリティ技術を活用し個々創薬標的・疾患に対して最適なモダリテイを選んで治療手段を提供する。新たなモダリティの創出により従来の低分子では困難であった創薬標的へのアプローチが可能となり、有効な治療法がなかった疾患に対する医薬品開発の取り組みとして様々なモダリティの研究が進められている。
ADMETスクリーニング
創製化合物のADMET特性をin vitro試験によって評価する創薬研究の仕組みである。
ADMETは、薬物動態の四つの過程であるAbsorption:吸収、Distribution:分布、Metabolism:代謝、Excretion:排泄およびToxicity:毒性の略語。
D/Pシステム
薬物のヒト経口吸収性予測に用いるin vitro試験系であるDissolution/Permeationシステムの略語である。薬物の溶解過程と膜透過過程を同時に評価することで、吸収率を精度良く予測できる特徴を有している。
高速パッチクランプ測定
容器底面に配置された電極に細胞を接触させ、陰圧を付加して細胞膜に細孔を開けることにより、細胞膜全体の電流測定が可能になる。これをマルチウエルプレートに適用し数百の細胞の電流を同時に測定する手法である。心筋細胞のチャネル電流を測定する催不整脈リスク評価に活用している。
HT-ADMET
ADMETスクリーニングを高速に行う仕組みである。自動リキッドハンドリングマシンを駆使することでマルチウエルプレートを用いた極小スケールの試験について高いスループットを実現している。
HTは、High Throughputの略語。
LC-MS/MS分析
LC-MS/MSとは液体クロマトグラフ(LC)に質量分析計(MS)を接続した分析装置で、血液・臓器中の薬物濃度測定等に使用されている。LC部で測定対象物質を夾雑成分から分離、MS部でイオン化した後、物質固有の質量数に由来するイオンを検出することで感度選択性の高い測定が可能となる。
内因性バイオマーカー評価
タンパク質や低分子物質などの生体内の物質のうち、病態の変化や治療の効果の指標となるものを内因性バイオマーカーという。薬物投与前後のこれらマーカーの変動を評価し医薬品の効果や副作用の客観的な指標とするとともに、これらの情報をもとに治療の方針を立てることにも活用されている。
SBDD研究
創薬標的タンパク質の3次元構造情報および医薬品候補化合物との複合体の構造解析を活用して合理的に医薬品分子を設計すること
Chemoinformatics
化合物の構造式の情報をIn Silicoで解析し情報科学を活用して創薬を推進する技術の総称
CADD
In silico で創薬標的タンパク質に対する医薬品を設計すること
Virtual screening
標的タンパク質に結合する化合物を見出す目的で実施する計算機上で大規模なスクリーニング
FBDD
分子量の小さな化合物(フラグメント)から医薬品を創出する方法論
クライオ電子顕微鏡
蛋白質の3次元構造解析を行う新しい手法。蛋白質溶液を凍結、電子顕微鏡でデータを取得する。
パラレル合成
使用する原料の異なる同一の分子変換反応を並行して実施することにより、短時間で効率的に多検体を合成する技術。反応や精製の自動化による促進も進んでいる。
3D pharmacophore fingerprint
分子内のファーマコフォアの3次元的な位置関係を表現する記述子で、化合物間の類似性を評価するために用いる。
TPD
Target Protein Degrader. 創薬標的タンパク質を分解する事で薬理活性を発揮する新たなメカニズムの医薬品。従来の阻害・活性化とは異なるタイプの医薬品が期待されている。
フェノタイプスクリーニング
細胞の生死や形態変化、遺伝子発現変化など、表現型(フェノタイプ)の変化により薬剤の活性を評価し、薬剤を探索する手法である。表現型の変化には画像解析技術が用いられることが多い。予めターゲットを特定せず探索を行うため、新規作用機序を有する化合物が得られるメリットがある。
Gene-to-Protein
遺伝子からスタートして蛋白質・抗体を作製するプロセス。各研究プロジェクトの様々な実験のそれぞれに最適(Fit-for-purpose)なコンストラクトを設計後に遺伝子操作で構築し、各種宿主で発現培養後に様々な手法を組み合わせて精製し、最適な型をもつ組換え蛋白質を作製する。
表現型解析
細胞に薬剤を投与し、得られた表現型(形態変化、蛋白質発現量変化など)を様々な観察手法やプローブを用いて可視化して、定量化することで薬剤の効果を判定する手法である。同時に得られる指標数が従来の手法より多いため、薬剤の多面的な効果を調べることができる。
IHC
免疫組織化学染色(Immunohistochemistry)の略語。抗体を用いて細胞や組織内の抗原を可視化する方法で、細胞・組織標本における目的の分子の局在を組織構造を維持した状態で観察できる。抗原の可視化には発色色素や蛍光色素が用いられる。
ISH
In situ hybridization の略語。細胞・組織標本上(in situ、その場)で、蛍光色素などで標識したプローブ(特定の配列を持つ核酸)を反応させることにより、目的とするDNAやRNAの分布状態を可視化する方法。
病理組織学的解析
組織標本を顕微鏡で観察し、病理学的知識に基づいて病変の有無や病変の種類を解析すること。標本の目視による定性的解析に加えて、顕微鏡写真と病理用画像解析ソフトを用いた病変の半定量解析も一般的である。病理診断のためのAIの開発もさかんに行われている。
マルチプレックスIHC
複数の抗体と色素を用いて、1個の標本上で複数の抗原を同時検出するIHCの技術。発色色素を使用する場合は2色を用いた二重染色が一般的であるが、蛍光色素を用いる場合は最大9色までの多重染色が可能である。
フローサイトメトリー
細胞を流路系で一つ一つ分離・解析する技術。細胞の分離をcell sorter、細胞の大きさや表面抗原の解析をcell analyzerで行う。「検出感度が高く、スループットに優れた蛍光顕微鏡」として例えることができる。
ゲノム編集
突然変異など自然環境で引き起こされる変化とは異なり、人為的に塩基配列を変化させること。革新的な手法(CRISPR/Cas9法)を開発したエマニュエル・シャルパンティエ、ジェニファー・ダウドナ両博士には2020年ノーベル化学賞が授与された。
セルソーティング
多種類の細胞で構成される集団から流路系を利用して目的の細胞のみを分離すること。目的細胞の判別には細胞表面に発現している特異的な抗原蛋白質が目印として使われることが多い。
Genome-wide CRISPR
Cas9 screening
ヒト細胞のゲノム中には蛋白質をコードする約20,000の遺伝子が含まれています。上述のゲノム編集技術を用い、これら遺伝子一つ一つが損なわれた細胞ライブラリーを調製し、その中から表現型や機能を指標に細胞(遺伝子)をスクリーニングすること。
薬剤感受性解析
薬剤に対する(癌)細胞・組織、もしくは生体の応答度合(=感受性)を解析すること。例えばオンコロジー領域で「薬剤感受性が高い」とは、癌細胞がある薬剤に対し、低濃度でより短時間で応答する(=増殖速度の低下、死滅)ことを指す。
immunoassay
抗原抗体反応の高い特異性と検出感度を利用して、蛋白質などの抗原を定量する方法のこと。分別検出の容易な物質で標識した抗原または抗体と分離分析法との組み合わせにより、高感度測定法やmultiplex測定法(一つのサンプル中の複数の抗原を同時に測定すること)が開発・実用化されている。
次世代シークエンス解析
多数のDNA鎖を同時に配列解析を行う「超並列シークエンス」による塩基配列解析技術。ライブラリ調製、シークエンス、データ解析のステップからなる。現在はショートリード解析が主流であるが、第3世代と言われるロングリードシークエンス技術も発展してきている。
エピゲノム
DNAの塩基配列の変化を伴わない、遺伝子発現の可逆的な制御の仕組みで、具体的には、DNAやヒストンの修飾などによるクロマチンの高次構造の変化による遺伝子発現調節の仕組みのことを指す。近年、生命現象や様々な疾患への関わりが明らかになってきている。
シングルセル解析
一細胞レベルで遺伝子発現やゲノム状態の解析を行う技術。ゲノム解析技術の進展により、一細胞レベルでの網羅的な遺伝子発現解析が可能になってきている。従来のような細胞集団の平均としての解析では解明することができない、細胞分化や発生、がんの微小環境での免疫制御などで有力な解析手法となる。